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(1952年(昭和27年)1月1日創立)
本ページは2003年11月にA5判サイズの教員向け配布用パンフレットとして作成されたものを元に構成してあります。
なお,オリジナルのパンフレット内容の作成については, 東京都立大学・短期大学教職員組合, 金沢大学教職員組合, 佐賀大学教職員組合 のご協力をいただきました。
はじめに
大学による改革案「横浜市立大学の新たな大学像について」が横浜市長に提出され, 大学改革が急ピッチで進められています。 上記の案では,独立法人化,任期制,年俸制がうたわれており, また「研究は,外部資金を獲得して行う」などの文言が並んでいます。 この案が実現すると,学問・研究の自由が侵害されるおそれがきわめて強くなります。
また,地方独立行政法人法によれば, 横浜市立大学の教員は公立人学法人に身分が承継されることになっていますが, 上記の改革案は,この法律に抵触しかねない内容となっています。 法人化にあたっては身分の承継が自動的に行われなければならないのに, 任期制という重大な身分変更を行うことは, 地方独立行政法人法に違反することになります。
なお,任期制については,「人学の教員等の任期に関する法律」において, これを適用してよい分野が限定されており,この点についても,上記の改革案は, 法的に重大な疑義を含むものとなっています。
横浜市立大学教員組合は, 独立行政法人化に反対するという基本的方針を掲げていますが, 同時に,「法人化・非公務員化」に備えて様々な取り組みをしています。 「非公務員」になると, 雇用や労働条件の仕組みはいったいどのように変わるのでしょうか。 賃金や労働時間はどのようにして決められるのでしょうか。 労働組合なしに雇用は守られるのでしょうか。 このパンフレットはこれらの疑問に答えるために作成されました。
現在,横浜市立大学を取り巻く状況は厳しいものがあります。 しかしながら, 地方独立行政法人法の付帯決議には 「地方独立行政法人への移行に関しては, 雇用問題,労働条件について配慮し, 関係職員団体または関係労働組合と十分な意思疎通 が行われるよう,必要な助言等を行うこと。」 「公立大学法人の設立に関しては,地方公共団体による定款の作成, 総務大臣および文部科学大臣の認可等に際し, 憲法が保証する学問の自由と大学の自治を侵すことがないよう, 大学の自主性・自立性を最大限発揮しうるための必要な措置を講ずること。」 とあります。
民間においても,世論と運動の力で「使用者(経営者)」の不当な押しつけをはね返し, 働く者の要求を実現した例は枚挙にいとまがありません。
使用者を動かすためには皆さんが組合に加入し,力を合わせることが必要です。
どうぞこのパンフレットを最後までご覧下さい。 そして,皆さんのご意見を組合にお寄せ下さい。 皆さんが組合の活動に参加し, 私たち働く者の要求実現の力となって下さることを期待してやみません。
Q1.「非公務員」になるとこれまでの労働条件の仕組みはどのように変わるのですか?
今まで私たちの地位,給与, 勤務条件などは地方公務員法や市の条例などによって決まっていました。 法人に移行する際に教員の雇用形態が「非公務員」になると, これまでの方式は適用されなくなり,法人の独自の判断で採用や退職, 労働条件などを決めることができるようになります。
しかし,これらが外部の制約を受けないというわけではありません。 市当局の現在の方針では, 大学の教育・研究や経営の基本的方針は「中期目標」や「中期計画」に明記し, 市長がこれを最終的に認可するという形になると思われます。 この「中期目標」や「中期計画」によって私たちの労働条件の大枠が制約されることになります。 法人に移行後は人件費を削減することが「中期計画」に盛り込まれる可能性があり, この場合,賃金引下げや,場合によっては人員削減につながるおそれがあります。 この意味で,「中期目標」や「中期計画」 の原案づくりに対して私たちは監視を強める必要があります。
Q2.賃金や労働時間,休暇などは具体的にどのようにして決まるのですか?
上に述べたように,法人の長は,「中期目標」や「中期計画」 の大枠に沿って賃金や労働時間,休暇などの労働条件を定めようとするでしょう。 その具体的な内容は法人ごとに定められる「就業規則」に記されます。 しかし,「就業規則」に定められた労働条件を, 私たちがそのまま受け入れなければならないというわけではありません。 教員組合(労働組合)を通して,それに対していろいろな注文をつけ, 要求することができます。これらについて順番に説明しましょう。
Q3.「就業規則」とはどのようなものですか?
労働基準法は従業員数10人以上の企業(法人を含む)の使用者に対して 「就業規則」を定めるように義務づけています。 「就業規則」の中には,賃金(計算や支払方法など), 労働時間(始業・就業,休憩,休日,交替制など),休暇,人事異動,退職, 懲戒などについて明記する必要があります。 使用者は「就業規則案」を作成し, 従業員の過半数を代表する労働組合または従業員の過半数を代表するものの意見を聴取し,その意見を添えて労働基準監督署に届け出なければなりません。 なお,ここで言う「意見」は賛成意見でも反対意見でもかまいません。 そのため使用者は 教員の反対にもかかわらず就業規則を定めることも法的には可能です。
Q4.理事長は私たちの雇用や労働条件を一方的に決めることができるのですか?
いいえ,そうではありません。 まず「就業規則」に盛り込まれる労働条件の諸事項は, 労働基準法の規定に違反してはなりません。 たとえば労働基準法は1週あたりの労働時間の上限を40時間としていますが, 仮に「就業規則」で45時間としてもそれは違法であり,したがって無効となります。 次に強調しておきたいのは 教員組合,つまり労働組合の役割がこれまでよりも数倍重要 になるということです。
Q5.では労働組合とはどのようなものですか?
「労働協約」とは何ですか?
最初に一般的なことからお話しましょう。 企業では労働者に比べて使用者(社長)が強い力をもっています。 そのため,労働者一人一人がバラバラに賃金や労働時間などについて使用者と交渉しても勝ち目はありません。両者は対等な関係とは言えません。 そこで,世界の大半の国では,労働者が団結して, つまり労働組合を作って集団のカをバックにして使用者と交渉する権利を認めるようになりました。 話し合いがつかない場合には労働組合がストライキをする権利を法律は認めています。 日本では憲法がこれらの権利(団結権・団体交渉権・争議権)を保障し, 労働組合法が具体的な仕組みを定めています。
けれど,労働組合を作っても加入する人が少なければ組合の力は弱いため, 使用者に押し切られることになるでしょう。 多くの人が労働組合に入ることが要求を実現するためのカギと言えます。 今,民間企業ではリストラの嵐が吹き荒れていますが,労働組合がない企業や, 労働組合の力の弱い企業では,使用者の思い通りの人員削減が行われています。
「非公務員」になると, 私たちは民間企業と同じように労働組合法の適用を受けますので, 使用者(理事長)に対して労働組合(教員組合)の要求を実現するように団体交渉を通して迫ることができます。 今まで教員組合の活動は地方公務員法や市の条例によってさまざまな制約を受けてきました。 たとえば学長交渉で取り上げる事項も勤務条件に限定されていましたが, 「非公務員」になるとこれらの制約はなくなります。 労働組合法は,使用者(理事長)が正当な理由なしに団体交渉を拒否したり, 誠実に応じないことを厳しく禁止しています。 賃金や労働条件をはじめ, 団体交渉で理事長と組合とが合意に達した事項は書面にして取り交わします。 これを「労働協約」といいます。 「労働協約」は法律と同じような拘束力がありますので, 使用者はこれを無視することはできません。
Q6.「就業規則」と「労働協約」とはどのような関係になるのですか?
たとえば理事長が「就業規則」でボーナスを年間4ヶ月分と定めたとしましょう。 しかし団体交渉で理事長が教員組合の要求を受け入れて年間5ヶ月分で合意し, 「労働協約」を締結したなら,法律の定めにより後者が優先します(この場合,ボーナスは年間5ヶ月分支給)。 つまり,理事長が一方的に定めることができる「就業規則」に対して, 教員組合は団体交渉を通して労働条件の引き上げを要求し, 「労働協約jの締結を実現することで「就業規則」 で定めた内容を上回る労働条件を確保することができるのです。 「労働協約」の適用を受けるのは労働組合に加入している人たち(組合員) に限定されますので,上記の例で言いますと, 組合員はボーナスを5ヶ月分支給されるけれども, 組合に加入していない人は4ヶ月分ということになります。 組合に入っている人と,入らない人では大きな違いが生まれますね。
(注)ただし,労働組合法の規定により労働協約の適用を受ける人が全教員
の4分の3を上回る場合には全員に適用されます。
ここで肝心なことは教員組合の力をこれまで以上に大きくすることです。 もし組合に加入している教員の数が少ない場合には, 団体交渉を重ねても理事長はなかなか私たちの要求を受け入れないでしょう。 多数の教員が組合に加入して交渉のカを強めることが大切です。
Q7.残業や休日労働の扱いはどうなるのですか?
労働基準法は労働時間の上限を「1週40時間,1日8時間」と定め, 使用者がこれを超えて労働者を働かせることを罰則をつけて禁止しています。 ただし,従業員の過半数を代表する労働組合または過半数を代表する者との間で 「時間外・休日労働に関する労使協定」(通称「三六(さぶろく)協定」)を締結し, 労働基準監督署に届け出るならば, 上記の労働時間の制限を越えても労使協定の定める残業時間の範囲内であれば 違法とはならないとしています。
法人に移行した時点で理事長が教員に対して合法的に残業させるためには, どうしても労使協定の締結が不可欠になります。 私たちは教員組合がこの労使協定の当事者となるべきだと考えています。
現在多くの民間企業では人減らしをする一方,職場に残った労働者には長時間労働を強いています。 働きたくても仕事がない失業者が何百万にも達しながら, 職場で過労死が後を絶たない背景にはこのような事情があります。 労働組合は「時間外・休日労働に関する労使協定」をもっと重視し, 協定締結にあたって何時間以上の残業は認めないという姿勢を明確にする必要があります。 仮に教員組合ではなく, 理事長の言いなりの人が教員の過半数を代表するものとして指名されたなら, 労使協定は時間外・休日労働を抑制するものとはならないおそれがあります。 むやみに残業に依存しない職場の体制を築くためには, 教員組合が労使協定の当事者となることが必要です。 そのためには過半数の教員の皆さんが教員組合に支持を寄せていただくことが不可欠です。
Q8.これまで組合に加入する必要はないと思っていましたが・・?
確かにそのように考えている人がかなりおられますね。 けれども, 「非公務員」の場合,私たちは自分の力だけで雇用や労働条件を確保することができるでしょうか。
これまで私たちの賃金は地方公務員俸給表によって決まり, 雇用についてもさしあたり保障がありました。 「非公務員」の場合,これらの前提はなくなります。 俸給表の適用は受けませんし, 法人の経営難を理由に人員削減や雇い止めが提案されるおそれもないとは言えません。 「中期計画」に毎年人件費をカットするという内容が盛り込まれる可能性もあります。 このようなもとで「雇用や賃金は自分の力で守るだけ」 と考える人たちが多数になったらどうなるでしょうか。 職場の中の競争は激しくなり, これまで以上に長時間勤務やサービス残業が広がるでしょう。 一部の人に高い賃金を支払うために 多くの人の賃金が切り下げられる可能性も出てくるでしょう。 非常勤教員の雇用はさらに不安定になるでしょう。 そうした事態を防ぐためにも教員組合の力を大きくして, 団体交渉・労働協約の締結によって雇用を確保し, 賃金や労働条件を決めるルールを確立することが大切ではないでしょうか。
一昨年一足早く独立行政法人に移行した産業技術総合研究所の場合を見ますと, 労働組合に加入する職員の人たちが多かったため, 法人移行後も従来の労働条件を確保することができたとのことです。
★これまで「自分にとって組合は必要ない」と考えてこられたみなさん!
「非公務員」になれば従来の仕組みは大幅に変わります。 ぜひ教員組合にお入りください。 力をあわせて雇用と労働条件を守る取り組みを強めましょう。
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