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任期制についての素朴な疑問Q&A

<シリーズ第1弾>


 2005年3月18日発行

横浜市立大学教員組合


 「同意書」は22日までにあわてて回答する必要はありません。教員が

まとまって行動すれば不備な条件を改善・撤廃させる力になります。ぜひ

教員組合に委任状を出しましょう。


Q1「同意書」が郵送されてきましたが、もし任期に同意しない場合、

雇用はどうなるのでしょうか?


 法人化によって従来の身分はそのままで(有期雇用ではなしに)公立大

学法人横浜市立大学に移行することが法律によって認められています。当

局も、本人の同意のない場合には従来のままでの身分移行であることは認

めています。ですから、任期への同意のない場合には、身分は自動的に移

行されます。

 他方、任期に同意しますと有期雇用に変更されます。その場合には、自

動的に再任されるわけでなく、雇用主である法人によって再任が拒否され

る可能性が生じてきます。つぎのQ2で触れますが、学会でも学問的力量

が認められ、社会的にも嘱望されて「普通」以上に仕事をしていた京都大

学の井上先生が、任期に「同意」していたとして再任を拒否される事件が

起きています。


Q2「普通にやっていれば再任する」と言っていますが、本当に大丈夫

ですか?


 「普通にやっていれば再任する」と当局はさかんに言っていますが、こ

の言葉はある事件を思い起こさせます。「普通に、まともに仕事していれ

ば、定年まで何度でも再任される」と説明を受けて任期に「同意」させら

れ、このことを根拠に任期満了と言うことで再任を拒否された事件です。

現在、裁判が続けられています。京都大学再生医学研究所の井上一知教授

は、日本再生医療学会の初代会長を務め、再生医療の研究業績で国際的に

高い評価を受ける研究者です。

 一流の専門家7人によってつくられた外部評価委員会で再任の審査が行

われ、委員全員の一致で再任が認められたのです。しかし、研究所は再任

を不当に拒否したのです。この事件は、その経過においてきわめて不明瞭・

不当な性格のものですが、しかし、任期制という制度の危険性を世間に知

らしめてあまりあるものです。


Q3 井上事件の時には、専門家の外部評価委員会が一致して可とした

のにそれでも再任拒否となってしまいました。提案されている審査制

度で大丈夫でしょうか?


 「普通にやっていれば再任する仕組み」にすると当局はずっと言って来

ました。ですから、教員のそれぞれが任期に同意するかどうかを判断しよ

うするときに、この「普通」ということをどのように判断するかは大変に

重要な意味を持つ訳です。

 しかし、任期規程には審査の「事項」は列挙されていても審査基準は明

示されていません。

 そうなると誰が何を「普通」と判断するのか。

 身分に関わる判断が明確な基準の規程にではなく、「教員人事委員会」

の判断に委ねられてしまうという恣意的なものになってしまうのです。し

かも、この「教員人事委員会」の構成などについても任期規程にはまった

く触れられていません。ですから、任期規程においては本質的に重要な機

能を担うべきこの委員会はまったく恣意的に構成され、そのうえ「普通」

がさらに恣意的に判断される危険性をもっているのです。

 しかも、当局は「任期の再任審査について」という説明文書では「5段

階の相対評価」を行うと言っています。となりますと、相対評価ですから、

「普通」をクリアーできない教員の存在が必ず想定されることになります。

つまり、再任不可の教員層が一定数常に想定されてしまうことになるので

す。これは、当局の主張との整合性という点でも、きわめて不合理な制度

設計といわざるを得ません。


*   シリーズ第2弾では、<再任不可の時、異議申し立てはどうなるのか?>

<同意しないと不利になることはないのか?><任期途中での転職はできるの

か?><任期付きの場合、育児や介護休業はちゃんととれるのか?><任期制

で昇任はどうなるのか?>・・・等々の疑問を考えてみます。

*   任期問題、その他の雇用条件に関して具体的な疑問を沢山お持ちと思いま

す。どのようなことでもぜひ遠慮なく教員組合までお寄せください。



任期制についての素朴な疑問Q&A

<シリーズ第2弾>


          2005年3月24日発行

              横浜市立大学教員組合


Q4 職場を変わりたいときには現在のように自由に異動できますか?


  今提案されている就業規則(案)では、退職しようとする6ヶ月前まで

に理事長に申し出ることとされています。翌年の4月に新任地に赴任する

と仮定すると、この条件ではその前年の9月には内定していなくてはなら

ないことになります。異動先の大学などの事情にも左右されますから、9

月時点での転出確定は現在でも容易ではありません。

 これでは任期付きであるか否かに関わりなく、全ての教員にとって他大

学などへの移動の自由がひどく制限されてしまいます。

 期間の定めのない雇用の場合には、解約を申し入れて2週間後には雇用

関係は終了することになっています(民法第627条)ので、6ヶ月とい

う定めは不法・不当です。


Q5 任期付きの場合の離職はどうなりますか?


 法律上は、期間の定めのない教員に比して大きな制約条件が付されてい

ます。 労働基準法上の、期間を定めた雇用の場合、期間には二種類あり

ます。3年の場合と5年の場合です。  

 3年任期の場合には、契約が始まった最初の1年間は転職できず、その

後の2年間は「いつでも退職できる」ことになっています(労基法第13

7条)。しかし、最初の1年間は拘束され、かつ、さきの6ヶ月の規定が

そのままだと移動がきわめて不自由になります。

 5年任期の場合にはこの第137条が適用されませんので、期間の定め

のない場合には認められている「辞職」が通常の理由では認められにくく

なっているのです。ですので、5年任期のケースでは、労働者からの契約

解除の申し入れに対しては損害賠償責任が求められる可能性が残ります。


Q6 でも、ほかの大学の理工系・医学系では任期付きでもけっこう異

動している人がいるのですが、どうしてですか? 任期法と労基法で

ちがいがあるのですか?


 他大学で行われている任期制は通常、教員任期法(大学の教員等の任期

に関する法律)にもとづくものです。それに対して、横浜市大で当局が導

入しようとしているのは、労働基準法第14条にもとづく任期制です。お

っしゃるように、教員任期法と労基法14条では大きな違いがあるのです。

 教員任期法にもとづく任期の場合には、1年以内の異動はできないので

すが、労基法14条による任期制に比して、しばりは少ないのです。学問

研究の性格上、大学教員の場合には必要とあれば自由に異動して研究環境

を変化させるという選択肢が保障されている必要があります。

 労基法14条による任期制では、この点での制約条件が、Q5へのお答え

で示したように、たいへんに強いのです。「全員任期」ということ自体が

学問教育の性格を無視した発想ですが、それを、労基法14条にもとづい

て実施しようという当局案が、二重三重に大学と学問教育の性格に反する

ものだといわなければなりません。


Q7 自分が3年任期か5年任期かなど、条件が明確でないのに、任期

に「同意」しても大丈夫ですか?


 Q5でみたように、3年任期と5年任期とでは身分的拘束の条件が異なっ

ています。ですので、自分の契約する任期が3年であるのか、それとも、

5年であるのかという具体的な契約条件が個々人に提示されていることが

「同意」するかどうかを判断する最低限の条件のひとつです。

 私たちが商品購入の契約をしようとするとき、その商品の基本的な属性

をつまびらかにしていなければ契約を結びはしません。私たちは、教育研

究労働を提供することでその対価を得ようとするわけですから、商品の提

供者には情報提供の義務があり、教員にはそれを知る権利があります。条

件がつまびらかになり自分が納得できなければ「同意」する必要は全くな

いわけです。

 <シリーズ第1弾>に指摘しましたが、任期への「同意」がなくても現

在の任期なしの身分は承継されます。


Q8 任期付きの雇用は将来、経営不振などで人員整理に使われません

か?


 率直に言ってこの点はたいへんに心配です。当局は「リストラが第一義

的な目的ではない」などと言っていますが、企業の場合には、経営不振の

時にまず整理の対象とされるのが、期限付労働者であるという事実から目

を逸らすわけにはいきません。

 法人化した横浜市立大学の大きな収入源は横浜市からの「運営交付金」

ですが、これが年次的に縮減されることがすでに示されています。また、

教育事業は営利目的になじまないので、授業料収入の大幅増を前提にする

わけにもいきません。法人の経営体としての課題は山積し、かつ、十分な

見通しを立てられているわけではありません。

 この条件のもとでは、ご心配のように任期が「人員整理」に使われてい

く可能性を否定できません。少なくとも、人件費がふくらむ高次のポスト

設定に経営側が積極的になる条件は多くはないでしょう。 むろん、教員

組合は、いかなる形であっても人員整理を許さぬよう全力を傾注します。

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